大判例

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東京地方裁判所 昭和26年(行)45号 判決

原告 海谷津留次

被告 法務大臣

一、主  文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は適式の呼出をうけながら本件準備手続期日並に口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものと看做された訴状の記載によれば、請求の趣旨として、被告は、原告に対し、昭和二十一年分より昭和二十六年分までの陸軍技師の恩給を支給し、且将来の恩給給付額を決定せよ。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求める旨申立て、その請求の原因として、原告は、陸軍技手として二十四年一ケ月、陸軍技師として十一年二ケ月勤続した結果、従来十余年に亘り、普通恩給として年額千四百六十八円を支給されていたものであるが、昭和二十一年二月一日、恩給局長により、陸軍技師は、昭和二十一年勅令第六十八号第一条に該当するものとして、同条により、右恩給額算定の基礎となつた原告の在職年数から、陸軍技師の在職年数を控除すべきものとの理由の下に恩給年額を五百四十三円に減額された。けれども前掲勅令並に昭和二十一年閣令第四号(昭和二十一年勅令第六十八号施行に関する件)第一条に照らすも、陸軍技師は、軍人にも、軍属にも、該当しないことは明白であるから原告の恩給金額を減額すべき理由はなく、従つて原告の陸軍技師としての在職年数を通算した在職年数を基礎とした恩給を支給すべきものである。よつて、先に減額された陸軍技師の在職年に相応する恩給年額中、昭和二十一年以降昭和二十六年迄の分の支給を求むると共に、将来の恩給給付額を決定すべく命ぜられんことを求むるものであると云うのである。

被告指定代理人は、原告の訴の却下を求めると述べた。

三、理  由

一、原告の本訴中恩給の支給を求める部分について、

本件に於ける被告は法務大臣(本訴提起当時は法務総裁)であるが、本来権利能力のない行政庁(本訴においては法務大臣)が訴訟に於て当事者能力を有するのは行政事件訴訟特例法第三条の場合と性質上同条の準用を見る行政処分無効確認訴訟の場合だけであるところ、恩給の支給を求めるのは公法上の関係ではあるが、右の何れにも該当しないことは明らかであるから恩給の支給を求める訴に於ては被告は当事者能力を有しないものと云うべく、本訴中この部分は不適法として却下を免れない。

二、本訴中将来の恩給金額の決定を求める部分について、

本訴中この部分は行政庁に対し行政処分の給付を求むるものであるが、現行法制上裁判所は行政庁に対し行政処分を為すべきことを命ずることはできないたてまえになつているものであるから、本訴中この部分も不適法として却下を免れない。

以上判示の通りであるから本訴は不適法としてこれを却下し、訴訟費用は民事訴訟法第八十九条を適用して原告の負担とし主文の通り判決する。

(裁判官 毛利野富治郎 北村良一 山田尚)

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